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番外編 埋もれ木
回りの大人たちに心配を掛けまいと健気にも明るく振る舞う奏音くん。じぃじは無事ですよ。小学校に登校するとき橘さんからそのことを教えてもらい、表情がぱぁ~と明るくなった。
「行ってきます!」
一太と一緒にぶんぶんと手を振り、迎えに来てくれた紗智さんと七海さんと手を繋ぎ元気いっぱい出掛けていった。
彼が家に戻って来たのはお昼近くになってからだった。
「たく、本人がいないことをいいことにありもしないことを好き勝手言いやがって」
「謝った情報でも信じる輩はいますからね。困ったものです」
川合さんが、彩さんがそうなってしまったそもそもの原因は、義理の妹にある。実の兄である被告人の元夫を色仕掛けで誘惑し関係を持ったことで被告人は流産し、それが原因で鬱を発症した。被告人はもしろ被害者だ。裁かれるべきは義理の妹。卯月未知。法廷で僕を名指しし非難した。
ある程度覚悟はしていたつもりだったけど、
「ごめんね陽葵、太惺、心望。ママ、悲しくないのに、涙が止まらなくなっちゃった」
しっかりしなきゃ。
柚さんだって大変なのに。怪我をした若い衆もいるのに。
メソメソ泣いている場合じゃないのに。
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