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番外編埋もれ木
「マーワルクナイ」
亜優さんが温かい飲み物を運んできてくれた。
「火傷したら大変だ。たいくん、ここちゃん、パパっておいで」
彼が太惺と心望を抱っこしようとしたら、スルリと腕をすり抜け、真っ直ぐ橘さんにハイハイで向かった。
「ふたりともままたんって行くとは予想していたけど、ひとりくらいパパって来てほしかったのにな」
すっかりへそを曲げてしまった。
「蒲公英茶(プー ゴン イン チャ)」
「シェ シェ。ちょっと待ってね。陽葵を寝せるから」
「さっきまでぐずっていだったんだ。俺が寝かし付ける」
「遥琉さんも疲れているのにごめんね」
「別に俺は何もしていないよ」
陽葵を彼の腕の中にそっと寝かせ、亜優さんからマグカップを受け取った。
「無言電話とか非難の電話、殺到してるんでしょう。お義父さんや千里さんや裕貴さん、度会さんや紫さん、みんなにまた迷惑を掛けちゃった」
ふぅふぅと冷ましながら静かに一口、口に運んだ。
「迷惑だなんて誰も思ってませんよ。上総さんと度会さんはかわいい娘のためになら火の粉でも何でも被ると」
「橘、それ、俺が言おうと思っていたのに」
「先に言わないあなたが悪い」
「だってひまちゃんが指をギュッと掴んでくれたんだ。言うタイミングを逃したんだよ。千里も、裕貴も、未知はかわいい妹だ。あんたらにグタグタ言われる筋はないと、マスコミを追い払った。だから、気にすんな。なるようにしかならないさ」
彼と橘さんと亜優さんに励まされ、手の甲で涙をそっと拭った。
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