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番外編 埋もれ木
目が合い、
「えっと……」
一瞬緊張したけど、
「はじめまして。卯月未知です。この子が一番末っ子の陽葵です」
何事も最初が肝心ってよくいうし。
彼に焼きもちを妬かれないかひやひやしたけど、にこっと笑んで自己紹介をした。
そしたら、玲士さんがふふっと微かに笑ったような気がした。なにか変なこと、言ったかな?
「菱沼組の姐さんは夫一筋。だから夫以外の男には一切興味がない。どんなにイケメンだろが100%見向きもしないーーオヤジが言った通りだったから。すみません気を悪くさせてしまって」
「いえ大丈夫です」
玲士さんとそんなことを話していたら、
「自己紹介が終わったならさっさと妻から離れろ」
さっそく焼きもちを妬いた彼がムッとして、玲士さんを睨み付けた。
するとそこへ、
「遥琉、子どもたちの前では喧嘩は厳禁。何度言ったら分かるんですか?」
お冠の様子の橘さんが現れた。
「玲士さん、あなたも肝に銘じてくださいね」
「はい」
玲士さんの背筋がぴんと伸びた。
「さっき組事務所で会ったのが長男のウーだ」
彼が紗智さんと那和さんを手招きした。
「次男の紗智です。この子は心望です。ちょうど1才2か月になったところです」
「紗智、肝心なこと忘れてる」
「え?なんだろう?」
「旦那に泣かれても知らないよ」
「あ、そうだった」
那和さんに言われ、
「鞠家紗智です。宜しくお願いします」
慌てて言い直した。
「僕が三男の卯月那和。この子が太惺。心望の双子の弟です。で、僕の後ろに隠れているのが、信孝の子供たちと姪っこです。ママが入院したり、病院にいるから、みんなで面倒をみてるんだ」
興味深そうに三人が玲士さんの顔をちらちらと見上げていた。
「れいじさん、はじめまして。いちたです」
「ハルちゃんです」
一太と遥香もちゃんと挨拶が出来た。
残るはあとひとり。四男の亜優さんだけだ。
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