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番外編 埋もれ木

根岸さんの袖にしがみつき縮こまりながら亜優さんが姿を見せると、玲士さんが「写真より何倍も可愛い」と思わず本音を漏らし、うっとりと見つめた。 「亜優は恥ずかしがりやなんだ。そんなにじろじろ見たら嫌われるぞ」 亜優さんは頬を真っ赤に染めると、根岸さんの背中に隠れてしまった。 「れいじさん、あゆさんがはずかしいっていってるよ。あとね、しつこいおとこはきらわれるよ。あゆさんにすきっていってもらえなくなるよ」 一太に大人顔負けのことを言われ、 「そうなのか?亜優に嫌われたら非常に困る」 玲士さんが動揺しソワソワしていた。 「一太に一本取られたな」 彼が苦笑いを浮かべた。 亜優さんが落ち着くまで居間で待つことになった玲士さん。 祭壇に気付くと、 「藍子さんに線香をあげさせてもらってもいいですか?」 彼に恐る恐る聞いた。 「構わないが一本だけにしてくれ。子どもたちが触って火傷をしたら大変だから」 「ありがとうございます」 玲士さんが祭壇の前に腰を下ろした。あるはずの物がなくてあちこちきょろきょろしていたら、橘さんがお盆に乗せたお焼香セットを運んで来た。 「一人が金を鳴らすと、みんな面白がってかんかん鳴らすし、線香やろうそく、それに灰を口のなかに入れたら大変なことになりますから、危なくて何も置けないんですよ。昨日まで手が届かなかったところも、今日は届くかもしれませんしね」 「玲士、家の中では禁煙だ。吸いたければ事務所で吸え」 「卯月さんが結婚する時、煙草も酒も女遊びもキッパリと断ったとオヤジから聞いて、私もそれに習い煙草も酒も止めました。あ、そうだ。お付き合いしている女性はいません。亜優一筋なので」 玲士さんが藍子さんの遺影と遺骨の前で静かに手を合わせた。

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