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番外編 埋もれ木
「玲士って、ストーカー?」
那和さんが呆れ返っていた。
「那和、年上を呼び捨てにしては駄目」
「私は構いません。呼び捨てでも」
玲士さんに穴が開くほど見つめられ、亜優さんが彼の袖をぎゅっと掴み、下を向いた。
「マー、見れば分かるよ。玲士のストーカーっぷりと、ド変態ぶりが」
そのうちの一冊を見せてもらった。
根岸さんの傍らで一生懸命仕事に励む亜優さんの様子が事細かく、几帳面な性格を物語るような丁寧で綺麗な字でびっしりと書き込まれてあった。
「玲士、亜優にドン引きされても知らねぇぞ。てかさぁー、これを通訳する紗智と那和の身にもなってくれ。読み終わるのを待っていたら陽が暮れてしまう」
元気いっぱい、はしゃぐ子どもたちの声が家中に響いていた。
陽葵、そろそろ起きる時間かな。
チラッとスマホの画面を覗いた。
「ひまちゃんに添い寝して寝かし付けているうち、ななちゃんも一緒にねんねしてたよ」
「ななちゃんが一緒だから大丈夫。何かあれば呼びにくるよ」
「うん、そうだね」
「ななちゃんって、失礼ですが……」
「鷲崎さんの奥さんの七海さんです。子どもたちがたくさんいるので、お手伝いをしてもらっているんです」
芫さんに命を狙われ菱沼組で匿っているとはあえて言わなかった。
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