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番外編 埋もれ木

「トゥォムー(駄目)」 その手首をがしっと掴んだのはウーさんだった。 柚さんを片腕で抱き上げると、軽々と肩に担いだ。 「ちょっと離しなさいよ!高いところ苦手なの!」 手足をバタつかせ暴れる柚さんを、強制的に廊下に連れ出した。 「たく、誰だ。家に上げたのは」 「どうか若い衆を責めないでくれ。悪いのは全部俺だ」 「お前が謝る必要はない」 柚さんは若頭補佐の妹。警護をしていた若い衆も通すしかなかったんだと思う。 「ちょっとどこ触ってんのよ!やだ、変態!」 喚き散らす柚さんの声に、 「言葉が通じなくてある意味良かったな」 彼が本音を漏らした。 「信孝、構うことはないぞ。心配しなくても橘か柚原の雷が落ちる。柚のことはふたりに任せろ。それよりも子どもたちが寝ている部屋に行ってやれ。晴も未来も、泣かずにお利口さんして待っていたんだ。寝る場所がもし空いていればそこで寝ろ。疲れただろう。仕事の合間に病院に行って、診療所に行って、柚を探して、朝から晩まで大変だったはずだ」 「オヤジすみません」 信孝さんが頭を下げた。

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