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番外編 埋もれ木

「ねぇ遥琉さん、なんか静かすぎない?」 「組事務所には紗智たちが寝泊まりしているから、菱沼金融にでも連れていったんだろう。呑まずにはいられない、やむにやまれない事情があるのは分かるが」 そこで言葉を一旦止めるとくすっと笑った。 彼の視線の先には、毛布を蹴飛ばし、なぜか布団の外で仲良く大の字でねんねしている幸ちゃんと遥香がいた。 「寝相の悪さは誰に似たんだって、俺と一央しかいないか。たいくんもここちゃんもお姉ちゃんたちに負けじと毛布を蹴飛ばして大の字でねんねしている。可愛いもんだな」 「うん。見てて飽きない。癒される」 「そうだな」 彼と手分けして毛布を体にそっと掛けた。 「朝になれば柚さん、いつもの柚さんに戻ってるかな?幸ちゃんが大好きなママに戻ってるかな?」 「その頃には酔いも覚めているはずだ。酒を呑んでもストレス発散にはならない。一央が退院したら、第三者を交え、一度腹を割って話し合ったほうがいいかも知れない。柚がアルコール依存になる前になにか手を打たなければ手遅れになる」 「うん、そうだね」 規則的な寝息を立てる幸ちゃんの髪をそっと撫でていると、 「未知、俺も」 彼が嬉しそうに擦り寄ってきて、膝の上にごろんと横になった。 「遥琉さん、子どもじゃないでしょう」 「未知の前では甘えん坊の子どもだ。これだけは一生変える気はない。5分でいいから寝かせてくれ」 腰にしがみつくとそのまま静かに目を閉じた。

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