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番外編 埋もれ木

先月、とある大学に入学したばかりの新入生がサークルの歓迎会で一気呑みして急性アルコール中毒で亡くなったという痛ましいニュースがあったことをふと思い出し、ぞっと身を(ふる)わせた。 「命には別状はないから、心配するな」 見つめると、彼は僕を気遣うような表情を見せてくれた。 そして、頭に温かな手が触れてきて。 そのまま優しく撫でられた。 「未知のその想い、今は無理だろうが、いつかきっと柚に届くよ」 静かに笑みを返された。 「柚の子どもたちを俺らみんなで守ってやろう」 「うん」 ゆっくりと頷くと、 「ごめんな、苦労ばかり掛けて」 ううん、ぶんぶんと首を横に振った。 遥琉さんが側にいてくれる。それがどれほど心強いか。 「ありがとう未知」 包み込むように抱き締められ、幾度となく優しく髪を撫でてくれた。 「度会さんから柚の話しを聞いためぐみと優輝はさほど驚かず、前も似たようなことが二度あって救急車で病院に行ったことを度会さんに話したそうだ。お母さんが迷惑ばかり掛けてごめんなさい。ふたりは頭を下げて謝ってばかりいたそうだ。幸には俺から話すよ」 スーツを颯爽と肩に羽織った彼のもとに、両手を挙げバランスを取りながら太惺と心望がよちよちとあんよしてきた。 「お、珍しいな。ふたりともパパって来るのか。おいで」 腰を屈め両手を大きく広げると、キャキャと笑いながら、腕の中に倒れ込むように飛び込んでいった。

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