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番外編埋もれ木
彼や子どもたちが出掛けたあと、風まじりの強い雨が、ぽつん、ぽつん、、ぽた、ぽたぽた……と音を立てて降りはじめた。
「未知さん電話ですよ」
「遥琉さん、忘れ物でもしたのかな?」
「残念ながら電話を掛けてきたのは遥琉ではありません」
「え?じゃあ誰だろう。千里さん?それとも裕貴さん?」
「ふたりとも用事があれば未知さんのスマホに直接電話を掛けてきますよ」
「そうだよね」
言われてみれば確かにそうだ。じゃあ誰だろう。検討もつかない。
あ、もしかして……。そのとき、ひとりの男性の名前が頭に浮かんできた。
「橘さん、もしかして……一央さん?」
「大正解です。実を言うと2日前から未知さんと話しがしたいと、たびたび連絡を寄越してくれていたんですけど、どこかの焼きもち妬きがその必要はないと、ろくに話しも聞かず門前払いをしていたんですよ。どうしますか?」
そんないきなり言われても困る。でも、一央さんに柚さんのことを話す絶好のチャンスかも知れない。
このチャンスを逃したら次は二度と来ないもの。
「橘さん、ここにいてください。僕だけでは心許ないので」
「たいくんとここちゃんは紗智さんたちがみててくれてますからね、分かりました」
陽葵はお手手をグーに握り締め、さっきから天井をじっと見つめている。
このまま機嫌良くしててね。陽葵に話し掛けながら、スマホを受け取った。
ドキドキしながらスピーカーに切り替えた。
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