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番外編 埋もれ木
『柚に離婚しろと余計な入れ知恵をしたのはお前か!』
電話に出るなりすごい剣幕で怒鳴り散らされた。
「似た者同士夫婦とはよく言ったものですね」
『もしかして橘お前か』
「私も未知さんも七海さんも夫婦円満、夫とはラブラブですからね、柚さんにかなり嫌われてますよ」
嫌味たっぷりに返す橘さん。
『じゃあ誰だよ』
「さぁ、誰でしょうね。私も未知さんも心当たりはありませんよ。元カレにでも聞いた方が手っ取り早いと思いますけど」
『……』
舌打ちする声が微かに聞こえてきた。
あれ今、元カレって……。
元カノの聞き間違いじゃないよね?
橘さんの袖を掴み、つんつんと軽く引っ張った。
「いま、説明しますね」
ポケットから便箋とペンを取り出す橘さん。ままたんだいすきとハートマークが3つ大きく書かれてあった。遥香からのラブレターだ。
「本当は書きたくないんですけどね」そう言いながらも、下の方に【一央さんは遼成さんの恋人でした】と走り書きをした。
嘘……にわかには信じられなくて二度見した。
『こそこそ何をしてる。どうせ俺の悪口だろう』
苛立ちわざと大袈裟なため息をつきながら愚痴をこぼす一央さん。
橘さんを怒らせたら怖いだよ。だから、その辺で止めといた方が身のためだよ。
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