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番外編 決して結ばれない恋だと知りながらも、それでも彼を一途に愛した
「ウーも言ってる。マーのこと何も知らない癖に、悔しいって。怒りを通り越して悲しいって。顔は笑ってはいるけど、怒ってるからね」
子どもたちの前では喧嘩しない。いなり大声を上げない。がみがみ一方的に怒らない。ウーさん、彼との約束事をちゃんと守ってる。
「龍成、一央に余計な入れ知恵をしたのは誰?未知があらぬ疑いを掛けられて一央に怒鳴り散らされたんだ。雨が強く降っていなかったら恐らく玄関の外まで聞こえていた。いきなり大声を出されて、たいくんとここちゃんが怯えて、しばらく泣き止まなかったんだ」
七海さんが腕を前で組み、龍成さんを睨み付けた。
『いい面構えになったな七海。橘に似てきたんじゃないか。余計なお世話かも知れないが、子どもたちばっか可愛がって、旦那のことほったからしにしていると愛想をつかれるか、浮気されるぞ』
「鷲崎にそんな度胸ないよ。ななちゃんに半殺しされるもん」
那和さんが真顔でボソリと呟いた。
それを聞いた龍成さんが、
『そういえばアイツも恐妻家だったな。七海ならやりかねない』
うん、うん、と何度も頷きひとりで納得していた。
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