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番外編 決して結ばれない恋だと知りながらも、それでも一途に彼を愛した
「みゆちゃん、むかえにきたよ」
夕方には雨もあがり、めぐみちゃんと優輝くんが度会さんらと一緒に幸ちゃんを迎えにきてくれた。
「おねえちゃん、おにいちゃん、ママは?」
「ぐあいが悪いから病院にいるよ。一日でも早くママが元気になるように、神さまにおねがいしようね」
「お利口さんにしていればすぐに帰ってくるよ」
「うん、みゆちゃんわかった」
幸ちゃんがにっこり笑って右手を挙げた。
「パパもみちさんにひどいことを言ったんでしょう。ごめんなさい」
めぐみちゃんに頭を下げられ、
「僕は気にしていないから、頭を上げて」
慌てて肩を軽く揺すった。
「たんじょうびプレゼントはいらないから、妹か弟がほしいって、みゆちゃんずっとママにおねがいしていたんだ。だから、ママに赤ちゃんができたって知っていちばん喜んでいたのみゆちゃんなんだ。赤ちゃんに、自分のなまえの一文字をつけて、ゆうちゃんってよんでママのおなかなでなでしていたんだ。だから、赤ちゃんがお空に行ってしまったこと、ママなかなかみゆちゃんに言うことができなかったんだ」
「お父さんひどいよ。赤ちゃんいなくなったの、ママのせいでも誰のせいでもないのに。ママばっか悪いって言うんだ」
「だから、ママにパパと別れるように言ったの?」
「だって、ママ、ずっとがまんしてきたんだもの。めぐみもゆうきもみゆちゃんもママの泣くすがたもう見たくない。だから、信孝おじちゃんのところに行こうって、ママに言ったの」
涙を手の甲で拭うと、
「みゆちゃんお家に帰ろう」
幸ちゃんの肩にリュックサックを背負わせた。
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