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番外編決して結ばれない恋だと知りながらも、それでも彼を一途に愛した

「千里の話しでは奏音の父親がいたアルバと似たようなことをしている会社らしい。国内の大都市に支店があるが評判はあまり良くな い。楮山や上田が都内にある支店に足繁く出入りしているらしく、本部が警戒を強めていたようだ。お、今日は随分とサービスがいいじゃねぇか」 くまのぬいぐるみの傍らに座ると、待ってましたとばかりに子どもたちが競うように手巻き寿司を次から次に作り皿にどんどん乗せていった。柚原さんより多いかも知れない。 「こういうとき地竜(ディノン)がいたらな」 彼が何気に祭壇に視線を向けた。 「奏音、ママにもっとうんと食べさせてやれ。一本だけじゃ足りないぞ」 「いいの?」 「あぁ、俺ばっかこんなにもらったら奏音のママに申し訳ない」 奏音くんがお皿に自分が巻いたものを乗せ祭壇に運ぶと、彼も一緒に付いていって、ポケットからパンをふたつ取り出すと一つは皿の隣に置き、もう一つは奏音くんに渡した。 「一太くんパパ、何でパン?」 「福島の名物といったらあかつきという名前の桃だ。これはあかつきの果肉入りのクリームボックスだ。今しか食べれないからな、奏音と、奏音のママにどうしても食べてもらいたくてな馴染みのパン屋から買ってきた」 「一太くんパパ、ママきっとよろこんでる。ありがとう」 「礼はいい。ほら、ちゃんと手を合わせるんだ」 「うん」 並んで座ると藍子さんの遺影に向かって静かに手を合わた。

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