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番外編 決して結ばれない恋だと知りながらも、それでも一途に彼を愛した

あ、そうだ。彼が何かを思い出したみたいでスマホを片手で操作した。 「3日前に地竜のアドレスからこれが送信されてきたんだ。紗智、那和どこだか分かるか?」 港は丘に丸く囲まれていて、そのなだらかなすり鉢みたいな斜面に沿って家々が肩を寄せ合うように集まっている。 雲ひとつない青空と紺碧の海のコントラストがとても美しい写真だった。 「そんなこといきなり言われても」 彼からスマホを渡され、画面を覗き込む紗智さんと那和さん。バーバの役に立ちたいと亜優さんも一緒になって覗き込んだ。 早速何かに気付いた亜優さんがふたりの肩を軽く叩き画面を指差した。 「亜優さんなんて?」 「マカオ近郊の港かも知れないって。孤児院の子どもたちを一人残らず国外に脱出させるためにここにいるのかもって」 「地竜がね、アメリカは養子縁組が盛んに行われているから、アメリカなら子どもたちに新しい親を見付けてあげることが出来るかもってずいぶん前にそんな話しをしていたみたいだよ」 額田さん同様、地竜さんも命がけで生き残った子どもたちを連れアメリカへ渡ろうとしている。当局と黒竜の厳しい監視の目をかい潜って。 どうか無事でいて。 たったひとつしかない命を大事にして。 僕には祈るしか出来ないくて。それが歯痒かった。

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