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番外編 決して結ばれない恋だと知りながらも、それでも彼を一途に愛した

「柚さん、体調はもう大丈夫なんですか?」 「ここに来たときよりはだいぶ。しばらくは通院が必要だけど、子どもたちのためにも一日でも早く元気にならないと」 「くれぐれも無理はしないで下さいね」 「ありがとう未知さん」 柚さんがちらちらとしきりにドアの方を見ていた。 誰かいるのかな? 息を詰め、そっと振り返ると、おっきい子どもたちがドアの影から心配そうに覗き込んでいた。 エヘヘ、見付かっちゃった。愛想笑いをしながら頭をかく紗智さんと那和さん。 「マーにまた酷いこと言いに来たってウーが」 「亜優がマーを助けなきゃって」 「みんな、ごめんね。心配掛けてしまって」 「ううん、平気」 おっきい子どもたちが居間に入ってきて、傍らに腰を下ろし、ニコニコと愛くるしい笑顔を振り撒く心望をそっと覗き込んだ。 「みんな、未知さんが大好きなのね」 「だって俺たちの大切なマーだもの」 「マーは、みんなのマーなのに、バーバばっか一人占めしてさぁ」 うん、うんと大きく頷くウーさんと亜優さん。 「だから鬼さんが出ないうちに、マーに甘えるの」 紗智さんと那和さんが肩にぎゅっと抱き付いてきた。ふたりが中国語でウーさんと亜優さんに話し掛けると、ウーさんがにっこりと笑んで、長い腕とその大きな身体で僕たち全員包み込むように抱き締めてくれた。 「未知さん、あなたが羨ましいわ」 柚さんがはじめて笑ってくれた。

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