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番外編 かなたのおうちは?

奏音くんの担任の先生から、50メートル走の練習中、ゴール目前で転んでしまい、足に怪我をしたと電話があって、根岸さんがすぐに迎えに行った。 「もう泣くな」 しょんぼりと項垂れて、暗い表情で彼の後ろを奏音くんがついてきた。 「保健室の先生は転んだ以外、何も言わなかったが、めぐみと優輝の話しでは口が悪い問題児がクラスに二人いるみたいだ。その二人が奏音を抜かしざま、わざとぶつかってきて、バランスを崩して転んだらしい。根岸は、相手の保護者と教頭と担任を交えて話し合うため小学校に戻った」 もう大丈夫だ。奏音くんに優しく声を掛けながら頭を撫でた。 お前の父ちゃん人殺しなんだろう。 お前の父ちゃん人を騙して捕まったんだろう。 3校時目が始まる前。そのふたりの児童が他の男子児童と奏音くんを取り囲んだ。 それに気付いた女子児童が担任の先生を、めぐみちゃんが隣のクラスの先生をそれぞれ呼びに行ってくれたから良かったけど、根も葉もない噂話しだけが一人歩きしてみたいだった。 「光希さんママとお話しする?」 なかなか顔を上げてくれない奏音くん。それならと膝を立ててその場に座り、顔を覗き込んだ。 「それとも龍パパがいい?」 「遼オヤジか?」 奏音くんは上唇を噛み締めると、スボンを手でぎゅっと握り締めた。

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