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番外編 かなたのおうちは

組事務所から戻ってきた彼に相談すると、 「鷲崎が板挟みになってるのか」 クククと笑い出した。 「笑い事じゃないよ」 「おぅ、そうだったな。ごめんな」 顔を覗き込まれ仲直りのキスと言わんばかりに、チュッと軽く頬っぺに口付けをされ頭を撫でられた。 「明日の朝、柚原と七海に光希を迎えに行かせようと思う。鷲崎が七海に会いたくてしょうがないみたいだ。七海がいなくなると寂しくなるが大丈夫か?」 「僕は大丈夫だけど」 子どもたちの寝顔をちらっと横目で眺めた。 「たいくんとここちゃん、七海さんに懐いていたから」 「だからふたりが目を覚ます前にここを出発するって言ってたのか」 「あ、そうだ」 肝心なことをすっかり忘れていた。 「芫に命を狙われないとは限らないが、弓削が鷲崎のところにいないのは気付いているはずだ。弓削は千里の保護下にあるから、心配無用だ」 千里さんが側にいてくれる。裕貴さんも秦さんも弓削さんの側にいてくれる。これほど心強いものはない。まさに鬼に金棒だ。 「奏音が、龍成に、かなたのおうちはどこですか?って聞いたらしい。龍成は、縣家が奏音のうちだ、みんな来るのを待ってるって答えたら、奏音、急に泣き出して、学校で何があったか、龍成に話したらしい」 そこで言葉を止めると急に思い出し笑いをした。 「いやな、そのあとが大変だったんだ。怪我をさせられたことに憤り、俺の奏音をバカにしやがって、相手の児童に落とし前をつけなきゃ腹の虫がおさまらない。福島に行くって騒いで舎弟に宥められていた。すでに親バカぶりを発揮している」

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