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番外編 奏音のおうちは

翌朝ーー。 毎日やたらと早起きの陽葵は今日も4時前には目が覚めて、グズることなく、自分のお手手をじぃーーと眺めていた。その陽葵を、帰る準備を済ませた七海さんがちょこんと隣に座り目を細めて見つめていた。 行ってくるね。また会いに来るね。子どもたちの寝顔を少しだけ見に来たつもりが、かれこれ10分は過ぎたかも。 バンザイでねんねしていた太惺の身体がびくっと大きく動いた。 「七海、そろそろ太惺も目を覚ますかも知れない。ギャン泣きされて、後追いされたくなかったら、今すぐ帰ったほうがいいじゃないか?」 横臥し陽葵に添い寝していた彼が七海さんを見上げた。 「分かってる」 名残惜しそうに陽葵の頬っぺを指の先でつんつんと優しく撫でてくれた。 「会いたくなったらまた会いに来たらいいんだ。ここは七海にとって実家みたいなもんだろう」 「ありがとう遥琉。じゃあ、鷲崎と何としてでも夫婦喧嘩しなきゃ。実家に帰らせて頂きます、これを一度でいいから、言ってみたかったんだ」 「だからといってわざわざ夫婦喧嘩しなくても」 「だって子どもたちに会いたいんだもの」 そのとき陽葵のお手手が、七海さんの指をぎゅっと握り締めた。 「鷲崎が待ってるから帰らなきゃいけないのに、帰りたくなくなるよ」 七海さんの声が涙声に変わり、口元を手で押さえた。

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