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番外編かなたのおうちは
「橘、悪いが今日の夕飯に味噌タンメンだったかな?作れるか?」
「また学校で何かあったんですね」
「すまん」
「いいえ大丈夫ですよ」
橘さんは小学校で何があったか、あえて詳しくは聞かなかった。
「ちゅるちゅるだ」
橘さんの足元にまとわりついていた未来くんが歓声を上げた。
「ラーメンは子供たちみんな大好きですからね」
台所の脇に置いてある戸棚から小麦粉と米粉を取り出し、慣れた手付きで早速準備をはじめた。
それを見た根岸さん、
「もしかして粉から作るのか?」
「未来くん、小麦粉アレルギーなんですよ。ですから、未来くんのは米粉で、みんなの分は中力粉と強力粉で麺を作るんです。みんなお手伝いが大好きなので、思ったより簡単ですよ」
「何でも作っちまうままたんは、やっぱりスゲェな」
根岸さんが羨望の眼差しを向けた。すると、ゴホンと物陰からわざとらしい咳払いが聞こえてきた。
「私を褒めてばかりいると、奥様に構ってもらえなくなりますよ」
「いや、それは困る」
根岸さんが急に慌て出した。
奏音くん、昨日みたくしょんぼりとして項垂れて帰ってくると思ったけど、「ただいま!」予想に反し一太と一緒に元気いっぱい帰ってきた。
「みちさん、たちばなさん、みつきさんまま来てくれたんだよ。学校に」
目を輝かせ、はじけるような笑顔を見せてくれた。
「未知、橘さん」
やや遅れて光希さんが顔を出した。
「……ごめんなさい。あ、あの……」
「お帰りなさい」
光希さんを元気付けようと明るく振る舞った。
「いつでも帰ってくればいいんです。ここは光希さんにとって実家みたいなものでしょう。お帰りなさい。良かった無事で」
「未知ありがとう。橘さんもありがとう」
光希さんが頭を下げた。
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