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番外編 かなたのおうちは
「近寄りがたいオーラがめらめらと出てて、怖くて声も掛けられなかったんだ。目を吊り上げ、おっかねぇ面して、一言も喋らなかった。奏音に会ったら、元の光希に戻るかと思って、奏音の下校時間に合わせて昇降口の前で待つことにしたんだ」
「貴方にも怖いものがあったんですね」
橘さんがクスクスと笑い出した。
「一つくらいあってもいいだろう」
決まりが悪そうに頬を微かに染めゴホンと咳払いをした。
「奏音がいつ光希に気付くかそわそわしながら待っていたら、めぐみと優輝と喋りながら階段を下りてきた。下駄箱に上履きを入れたとき、靴がないことに気付いたんだ。めぐみと優輝に声を掛け、3人で手分けして他の児童の下駄箱を確認して回っていたら、少し離れたとこにいた4人の男子児童が奏音たちの姿を見てゲラゲラと笑っていた。それを見た光希が、すぐに奏音に駆け寄り、目を吊り上げてその男子児童たちを睨み付けた。俺と光希で男子児童たちの首根っこを掴み職員室に連れていき、教頭に事情を説明し、男子児童たちを問いただしてもらったら、トイレのゴミ箱から奏音の靴が見付かった。いくら外履きとはいえ、トイレのゴミ箱に入れられた靴なんか誰も履きたくないだろう。だから、光希が奏音をおんぶして、一緒に帰ってきたんだ。奏音、光希の背中に嬉しそうにしがみついていた。靴を隠されて悲しいはずなのに、光希に会えて、甘えることが出来て、そんなことどうでもよくなったらしい」
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