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番外編 かなたのおうちは
奏音くんは光希さんの側を片時も離れようとはしなかった。
ママ、ママって呼んで、会えなかった寂しさを埋めるように甘えていた。
「この状況で、もし柚が来たらどうなるんだ?」
「血の雨が降るかも知れませんね」
「ふたりとも普段大人しい分、怒るとおっかねからな」
彼と橘さんと柚原さんがヒソヒソと話していたら、
「ちゅるちゅるだ~~おいしそう~~」
幸ちゃんがひょっこりと姿を現した。
「光希、メシ食べ終わったんだろう?奏音と先に風呂に入ってこい」
柚さんと鉢合わせにならないように彼が声を掛けた。
「柚は来ないから安心しろ」
晴くんと未来くんを迎えに来た信孝さんが後ろから現れた。
「みんなでラーメンを作ったんだって晴と未来から聞いたんだろう。食べたいって駄々をこねて……あとはだいたい予想がつくだろう。遥琉、悪いが一晩だけ幸を泊めてくれないか?」
「それは構わねぇけど……」
チラッと横目で橘さんと光希さんを見た。
「私は構いませんよ。光希さんは?」
「俺も別に」
顔を逸らし素っ気なく答えると、奏音くんの手を引っ張りお風呂へ連れていった。
「いっしょにはいる」
信孝さんが止める間もなく、晴くんと未来くんがあとを追い掛けた。
「ただでさえ機嫌が悪いんだ。そっとしておいた方がいいのに……」
信孝さんが深いため息をついてガックリと肩を落とした。
「仕方ないですよ。ふたりも光希さんが大好きなんですから。幸ちゃん、まずは着替えが先です」
橘さんが優しく声を掛け、幸ちゃんを別の部屋に連れていった。
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