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番外編 かなたのおうちは
「み~~つ~~き」
何を勘違いしたのか、彼が目を吊り上げて飛んで来た。
「だから、奏音に」
「頼むから刃物を子どもたちに見せないでくれ。今まで散々怖い思いをしてきた子どもたちにそのときのことを思い出させたくないだ」
彼の言葉にはっとして、慌ててナイフを鞘にしまう光希さん。
「一央から遼を奪ってしまったのは事実。だから、遼と別れて、一央に返そうとしたけど……」
そこで言葉を止めると声を詰まらせた。
「やっぱり駄目だった。俺、自分が思うより遼も龍も、ふたりとも愛してる。だから、別れることがどうしても出来なかった」
光希さんは肩を震わせ涙ぐんだ。
「縣一家の姐は光希しか務まらない。光希がいなかったら、遼も龍も喧嘩ばかりで袂を分かち、縣一家も真っ二つに分裂して小競り合いを続けていた。光希がいたから、遼は自分が遼禅の隠し子だとみんなの前で堂々と告白し縣一家を継いだんだろう。龍もあの通り更正し、父親になろうとしている。これもみんな、光希がふたりの側にいたからだろう」
「遥琉、俺を褒めるのはいいけど、未知に焼きもちを妬かれても知らないよ」
「生憎、未知は俺みたく焼きもち妬きじゃない。だって、焼きもちを妬く必要がないくらい、俺は未知にぞっこん惚れているし、未知だって俺以外の男には、ソイツがどんなにイケメンでも見向きもしない。約一名、例外はいるがな」
それって地竜さんのことだ。
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