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番外編 かなたのおうちは
でもその目は笑っていなかった。
「光希さん、奏音くんは怒った顔より笑った顔の方が好きですよ」
諭すように光希さんの顔を見つめる橘さん。
「一央を本気で刺そうと思った。刺さなくてもビンタのひとつくらいお見舞いするつもりだった。でも、めぐみや優輝や幸の顔が浮かんできて、子どもたちから父親を奪う権利は俺にはない。だから、踏み留まることが出来た。奏音を悲しませる訳にもいかないし」
本音を漏らすと、橘さんをじっと見つめ返した。
その時、すっーと静かに居間のドアが開いて、眠り眼を擦りながら奏音くんが入ってきた。
「ママは?かなたのママ知らない?」
「奏音、おいで」
光希さんが両手を広げると、
「あ、いた、ママ」
嬉しそうにニコッと破顔し、腕のなかに飛び込むと、そのままストンと、何事もなかったようにすやすやとまた眠り始めた。
「西岡は遼に千里を裏切るようあの手この手を使ってきてる。でも、安心して。縣一家は何があっても千里を裏切らないから」
光希さんがあどけない寝顔で熟睡する奏音くんの顔を愛おしそうに見つめると、そっと静かに抱き締めた。
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