1644 / 4008

番外編 かなたのおうちは

橘ヘルプ!橘!彼の慌てた声が聞こえてきた。 「ほら噂をすればなんとやらです」 「普通は未知なんだけどね」 「普通はね」 紗智さんと那和さんが顔を見合わせるとぷぷっと吹き出した。 僕より橘さんの方が頼りになるもの。それが事実なんだもの。いちいち目くじらを立ててもしょうがない。役には立たないけど、邪魔にならないよう子どもたちの様子を見に行こうとしたら、 「未知さん、光希さんが折り入って話しがあるそうですよ」 橘さんに引き留められた。 「あ、でも……」 陽葵がおっぱいを欲しがって泣いているかも知れない。 太惺と心望は眠りが浅いから、オムツが濡れて気持ち悪くて泣いているかも知れない。 「こういうときでもないと、話す機会はありませんよ。次にいつチャンスが巡って来るか分かりませんし、手に負えないときは呼びに来ます」 紗智さんと那和さんを連れ寝室へと急いで向かった。 いざ二人きりになり、緊張のあまり両手を握り合わせ、エヘヘと愛想笑いをすると、 「そんなに緊張しなくてもいいのに」 光希さんに困ったようにくすくすと笑われてしまった。

ともだちにシェアしよう!