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番外編 かなたのおうちは

「なんで奏音を縣家(うち)で引き取ろうと決めたか分かる?」 「えっと……」 言われてみれなんでだろう。首を傾げると、 「茨木さんが、虐待の連鎖をどこかで止めなきゃいけない。しつけと暴力は違う。子どもは親の都合のいい玩具じゃない。一度だけ一央と柚を本部に呼び出して注意したことがあるんだ」 「何でお祖父ちゃんが?」 「虐待の疑いがあると通報されて、児童相談所から事情を聞かれた。それも三回」 「嘘」 にわかには信じられなくて声が上擦った。 「仏の顔も三度までだ。次はないから覚悟しておけ。幸をお前たちから取り上げて俺が育てる。その方がよっぽどましだ。滅多に怒らないあの仏の茨木さんが怒っていたから驚いたって、立ち会った遼と千里が話していた。奏音がね、幸の姿に重なったんだ。母親が恋しくて、甘えたいのに拒否されて、しまいにはうざいって叩かれて……だから、奏音を引き取ろうと決めた。親に愛され、幸せになるために産まれてきたのに、このままだったら奏音も不幸になる。藍子さんも母親からネグレストを受けていたってお義父さんから聞いた。俺と遼と龍で、虐待の連鎖を止める。奏音を絶対に幸せにして、藍子さんを安心させてあげないと」 光希さんが奏音くんを抱き直すと、ぎゅっと両手で抱き締めた。 「信孝と遥琉と裕貴、それに千里。みんな、血の繋がらない子どもを引き取り息子として育ててる。だから、みんな仲間であり、ママ友パパ友でもあるから心強い。不安がないとは言い切れないけど、一人じゃないから」 彼と一太みたいな、そんな親子になれるといいな、光希さんが胸の内を話してくれた。

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