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番外編 忍び寄る魔の手

メールや時間を見るために携帯電話を何度もチェックする彼。心配でじっとしていられない、そんな感じだった。 そしてその嫌な予感は見事に的中した。 「遥琉さん、度会から電話があって、柚さんにまんまと逃げられたって」 「度会さんを出し抜くとは。たいしたもんだ」 「会計を済ませ帰ろうとしたとき、トイレに行きたいって急に言い出したみたい。どれだけ待っても柚さんが出てこなくて、病院の女性スタッフに事情を話し様子を見に行ってもらったら、手足を縛られた下着姿の清掃員の女性が個室に閉じ込められていたみたいよ。その清掃員の作業着を着て逃走したんじゃないかって」 幸ちゃんが今にも泣きそうな表情を浮かべた。 「私たちが柚さんのことをどれだけ心配しても、彼女には一ミリも届かなかった。うざったいただの雑音にしか感じなかったのでしょうね」 紫さんが肩を落とし、腕にもまったく力が入らないのか後ろによろめいた。 「おばあちゃん!」 幸ちゃんが雑巾を放り投げて、紫さんに駆け寄り、 「みゆちゃんいるからね。だいじょうぶだよ」 自分より何倍も大きい体を懸命に支えようとした。 「幸ちゃんありがとう。優しいのね」 目を潤ませ、幸ちゃんの頭を優しく撫でてくれた。 「遥琉さん、お願い。子供たちから母親を奪おうとするシェドから柚さんを守って。柚さんは寂しいだけなのよ。一央さんにもっと愛して欲しかっただけ。遼成さんじゃなく自分を見て欲しかっただけなのよ」

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