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番外編 ゴメンね

「度会さんと紫さんには子どもがいないから、未知や柚を実の娘のように可愛がってくれる。俺たちや若い衆も、実の息子のように分け隔てなく可愛がってくれる。悪いことをすれば当然叱られるし、いいことをすればうんと褒めてくれる。いわば紫さんはみんなのお母さんだ」 「柚さんにそのことを伝えなきゃ。紫さんは、憎いから怒るんじゃない。柚さんが可愛くて仕方ないから、叱るんだって。紫さんは、柚さんがいないところで、怒ってばかりでごめんなさいって謝っているんだよって。こうしちゃいられない。病院に行かなきゃ」 「未知、面会の時間はとうの昔に過ぎているぞ。こんな深夜に押し掛けたらそれこそ迷惑だぞ」 彼に言われてようやくそのことに気付いた。 「おっちょこちょいでごめんなさい」 エヘヘと笑って誤魔化した。穴があったら入りたい。 「未知の言うことにも一理ある」 裕貴さんがスマホを掲げた。 「悪いと思ったがふたりの会話を録音させてもらった。明日の午後、信孝と見舞いに行ってこれを柚に聞かせる。未知、産後の無理は一生祟るという言葉がある。だから、きみは動くな。いいな、必要とあれば俺が柚をここに連れてくる」 頼もしい一言がなによりも心強くて。嬉しかった。 「未知、裕貴のこと、これからはひろきお兄ちゃんって呼んであげたら?」 光希さんがくすっと笑った。 「光希、余計なことを言うな」 裕貴さんが急に慌て出した。

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