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番外編 ゴメンね
「これでよしと。遥琉、未知さんおやすみなさい。お邪魔しました」
服を両手で抱えると、橘さんが何事もなかったように寝室をあとにした。
「いつもなら小言をこれでもかっていうくらい言うのに、今日はやけに静かに出ていったな。未知、手邪魔だ。それじゃあ、キスが出来ないだろう」
「だって寝るんじゃないの」
「寝るよ。未知とキスをして、あちこち触って、イチャイチャしたらな」
「え?そんな……遥琉さん待って」
「却下。待っていたら陽葵と遥香が起きるだろうが」
手をどかすと、有無をいわさず彼の唇がすぐに唇に重なってきて、さらにきつく抱き締められた。
度会さんの家と組事務所に県警とマトリとソタイの合同捜査班が、大麻取締法違反の疑いでガサ入れが入ったのは翌朝7時のことだった。
幸ちゃんは6時にはここに連れてきてもらった。めぐみちゃんと優輝くんは6時半には家を出て登校時間が来るまで根岸さんと伊澤さんの家にお邪魔している。一太と奏音くんもだ。
「根岸さんと伊澤さんと蜂谷さん、三人で子どもたち守りきれるかな?」
「鳥飼さんとフーさん夫婦も一緒ですから心配無用です。県警は今も楮山と連絡を取り合っているのではないかと鳥飼さんを疑っていますからね。面倒なことに巻き込まれる前に身を隠すのが一番です」
「それならいいけど……」
いつも笑って隣にいる彼がいないくて。心配で心が落ち着かなかった。せっかく橘さんが温かいタンポポ茶を淹れてくれたのに。飲まないでいたらすっかり冷めてしまった。
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