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番外編 ゴメンね
「遥香、ママいるからもう大丈夫だよ。泣かなくてもいいんだよ」
ぎゅっと抱き締め、震える背をそっと撫でて宥めた。
「橘さん、お兄ちゃんたち大丈夫かな?」
「心配無用です」
さっきまでの騒々しさが嘘のようにし~~んと静まり返った。物音ひとつしなかった。
「ママ」
遥香が不安げな眼差しでそっと顔を上げた。
「ママのお兄ちゃんもウーさんもパパと同じで強いからきっと大丈夫だよ」
「うん」
遥香が鼻を啜りながらもようやく笑顔を見せてくれた。
「たく、はた迷惑な連中だ。威勢がいいのは口先だけだ」
やれやれとため息をつきながらお兄ちゃんが戻ってきたのはそれから5分後のことだった。
「裕貴さんが龍一家の組長だと分かるやいなや蜘蛛の子を散らすようにあっという間にいなくなりました。さすがです。カッコいいです」
玲士さんが興奮冷めやらぬといった感じでいつもよりテンションが高かった。
「ここにガサ入れには来ない。もう大丈夫だ。下にいる連中もほとんどが引き揚げた」
「ゆうおじちゃん、パパは?おにいちゃんとかなくんのうんどうかい、おそくなっちゃうよ」
「10まで、10回数えたら帰ってくる。お兄ちゃんたちの運動会の開会式は9時からだから、急がなくても大丈夫だ。ハルちゃん、おじちゃんっておいで」
うん、遥香が大きく頷き、膝から下りると両手を広げ、抱っこしてもらった。
「わぁ~~たかい」
キャキャと歓声を上げる遥香を、幸ちゃんが羨ましそうに見つめていた。それに気付いたお兄ちゃんが、
「おじちゃんで良かったら抱っこしてやる」
片方の腕を大きく広げた。
「いいの?」
「あぁ、おいで」
誰かさんみたくぎっくり腰になっても知りませんよ。橘さんに心配されながらも、遥香と幸ちゃんを抱っこしてくれて。そのあと一緒に遊んでくれた。
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