｢ちくって痛かったのは誰だ？」 ｢遥香か？幸か？」 幸ちゃんはてっきり怒られるとでも思ったのかな。ビクビクして遥香の後ろに隠れてしまった。 ｢ダーリンも、ハルくんもそんな怖い顔をしないの。みゆちゃん怖がってるわよ」 チカちゃんが膝を立ててふたりの前に座り込んだ。 ｢みゆちゃん、お姉さんたち別に怒ってる訳じゃないのよ。怪我をしていないか、それが心配なの」 ｢みゆちゃん、痛かったほうのお手手を出せますか？」 橘さんがチカちゃんの隣にしゃがみこんだ。 ｢うん」 おっかなびっくり右手を差し出し、 ｢ここだよ」 人差し指をふたりに見せた。 ｢裁縫箱は、子どもたちの手が届かない高いところに紫さんも橘さんもちゃんと保管しているよ」 ｢未知さんの言う通りです」 ｢針じゃなくて、これは注射針の跡よ。腫れてるわね。ダーリン、ぬいぐるみを確認して」 チカちゃんがスマホを耳にあてた。 ｢注射針って、遥琉さん、お兄ちゃん……」 ｢まさかそんなところに隠してあるとは誰も思わないよな」 彼が念のため上澤先生に連絡を入れてくれた。