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番外編 龍ぱぱ
「いちいち息子に焼きもちを妬いていたら、この先が思いやられるぞ」
「親子水入らず。たまにはふたりきりにしてやればいいのにな」
「東京に戻ればそう簡単に会えなくなる。三ヶ月が子どもにとってどんだけ長いか」
てっきり組事務所に戻ったと思っていた鞠家さんと柚原さんが玄関に座り込みなにやら話し込んでいた。
「ごめんなさい。盗み聞きするつもりはなかったんです」
慌てて立ち去ろうとしたら、
「姐さん」
ふたりに呼び止められた。
「隠してもすぐ分かることなんで正直にいいますが、実は……」
耳元でゴニョゴニョと、龍成が息子の運動会にわざわざ駆け付けたんですよ。小声で囁かれた。
「嘘」
びっくりして目を丸くした。
「姐さんしーです」
「橘に内緒なんで」
「え?なんで?」
別に言っても怒られないと思う。逆に黙っている方が怒られると思うんだけどな。
「焼きもち妬きの亭主が間違いなく邪魔しに来る。今回ばかりはふたりきりにさせてあげたいから、絶対口外しないように。橘が口を酸っぱくして言っていたんだが、どこから漏れたんだか……」
「イジメが解決した訳じゃないんだ。アイツが大人しく座ってるとは思えない」
ふたりしてはぁーとため息をついた。
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