｢国井さん、仕事を持ち込まないで頂けますか？」 不機嫌な表情を浮かべながら橘さんが台所から顔を出した。 ｢すまない」 慌てて頭を下げた。 ｢なんかご機嫌斜めじゃないか？気のせいか？」 ｢うん、気のせいだよ」 笑って誤魔化そうとしたけど。 「気のせいじゃない。ただでさえ怖いのに。誰だ、怒らせたのは」 さすがに龍成さんとは言えず黙っていたら、彼から着信があった。 ｢電話に出ないのか？」 怪訝そうに聞かれ、 ｢電話？全然気付かなかった」 えへへと笑いながらスマホを耳にあてた。 ｢みんな、ごはんだよ～～」 ｢はやくこないとなくなるよ～～」 「ハルちゃんとみゆちゃんで、ぜ～～んぶたべちゃうよ」 「たべちゃうよ」 橘さんに組事務所に電話を掛けてもらい、大きい声で話し掛ける遥香と幸ちゃん。 ふたりとも鞠家さんですかって確認するのすっかり忘れてる。 それから５分と掛からず、亜優さんと鞠家さんと蜂谷さんが姿を見せた。 ｢帰ったんじゃなかったのか？」 チカちゃんと国井さんを一目見るなり鞠家さんが不機嫌そうに眉をひそめた。 ｢今はプライベートの時間です」 チカちゃんが頬っぺをぷっと膨らませた。 「オヤジと柚を逮捕しに来たのか？」 蜂谷さんが目を吊り上げふたりを睨み付けた。 「だから、違うってば」 「頼むからそう睨むな」 チカちゃんと国井さんが首を横に振り慌てて釈明していた。