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番外編 龍ぱぱ
「焼きもちを妬きたくても妬けない。俺や那和と比べたら、お前ら、幸せだよ」
蜂谷さんが何気に口にした一言で、場が一瞬静まり返り、なんともいえない気まずい空気が流れた。
「あ、そうだ。ねぇ、はっちゃん。タマの面会に行ってあげてよ。ずっと待ってるわよ」
「チカの言う通りだ」
「手紙だけなんて、寂しいわよ」
蜂谷さんが黙り込んでしまった。
「ハチ、今度一緒に行こう。俺も、タマに聞きたいことがあるんだ」
「あぁ、分かった」
やや間を置いてから蜂谷さんが静かに答えた。
「ままたん、おかわりある?」
幸ちゃんがお椀を両手で持ってすっと立ち上がった。
「あさごはん、おにぎりだったからおなかすいちゃった」
「いっぱいありますよ」
「やったー!」
「飛び跳ねたら汁が溢れますよ。幸ちゃん以外にお代わり欲しい人」
はい、国井さんが真っ先に手を挙げた。
「あれ?もしかして大人は俺だけ?」
「もうひとりいますよ」
クスリと笑うと食べ終わった食器を持って台所へと向かった。
それから三十分後。
「ただいまーー!」
一太と奏音くんが元気いっぱい帰ってきた。
「いいにおいがする」
「たべたばかりなのに、あれれ?おなかすいちゃった」
「一太くんも?エヘヘ、かなたもだよ」
「奏音と一太の言う通りだ。旨い匂いがするな」
龍成さんの声が聞こえてきて、その瞬間、橘さんの顔色がガラリと変わった。眉間にどんどん皺が寄っていった。
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