1716 / 3281

番外編 龍ぱぱ

「焼きもちを妬きたくても妬けない。俺や那和と比べたら、お前ら、幸せだよ」 蜂谷さんが何気に口にした一言で、場が一瞬静まり返り、なんともいえない気まずい空気が流れた。 「あ、そうだ。ねぇ、はっちゃん。タマの面会に行ってあげてよ。ずっと待ってるわよ」 「チカの言う通りだ」 「手紙だけなんて、寂しいわよ」 蜂谷さんが黙り込んでしまった。 「ハチ、今度一緒に行こう。俺も、タマに聞きたいことがあるんだ」 「あぁ、分かった」 やや間を置いてから蜂谷さんが静かに答えた。 「ままたん、おかわりある?」 幸ちゃんがお椀を両手で持ってすっと立ち上がった。 「あさごはん、おにぎりだったからおなかすいちゃった」 「いっぱいありますよ」 「やったー!」 「飛び跳ねたら汁が溢れますよ。幸ちゃん以外にお代わり欲しい人」 はい、国井さんが真っ先に手を挙げた。 「あれ?もしかして大人は俺だけ?」 「もうひとりいますよ」 クスリと笑うと食べ終わった食器を持って台所へと向かった。 それから三十分後。 「ただいまーー!」 一太と奏音くんが元気いっぱい帰ってきた。 「いいにおいがする」 「たべたばかりなのに、あれれ?おなかすいちゃった」 「一太くんも?エヘヘ、かなたもだよ」 「奏音と一太の言う通りだ。旨い匂いがするな」 龍成さんの声が聞こえてきて、その瞬間、橘さんの顔色がガラリと変わった。眉間にどんどん皺が寄っていった。

ともだちにシェアしよう!