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番外編 龍ぱぱ

龍成さんがようやくチカちゃんの存在に気付いた。 「てめぇーー」 声を荒げ目を吊り上げて隣の子供部屋に怒鳴り込んだ。 「なんでマトリがいるんだ。ガサ入れはとうの昔に終わったはずだ」 「完全プライベートタイムです。マトリの乾千景じゃなく、チカお姉さんとして遊びに来たのよ。ね、ハルちゃん、みゆちゃん」 「うん」 「そうだよ」 買い物ごっこのあと、ままごとをはじめた三人。キラキラと輝く姪の笑顔に、それまで強張っていた龍成さんの表情が少しだけ和らいだ。 「旦那様は組事務所で鞠家さんと蜂谷さんと打合せをしてますよ」 「顔出ししてこないとまずいな。悪かった。大きい声を出して」 龍成さんがスーツを肩に担いで居間を出ていこうとしたら、 「りゅう、パパ。もう帰っちゃうの?」 下着姿の奏音くんが泣きながら駆け寄り、長い脚にぎゅっとしがみついた。 「挨拶してくるだけだ。着替えをして、光希ママと待ってろ」 「ほんとう?ぜったいに帰らない?」 「あぁ。本当だ」 大きな手で頭を撫でて、それから指切りげんまんをすると、ようやく納得することが出来たのか奏音くんに笑顔が戻った。

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