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番外編 天哪!

彼の腕枕で目が覚めた。 「朝から賑やかでおちおち寝ていられないよな。おはよう未知」 彼の顔が近付いてきて、おでこにちゅっ、と軽く口付けされた。 この泣き声は……奏音くんのだ。 「光希と出掛けるの楽しみにしていたからな。まぁ、無理もないか」 「明日晴れますようにって藍子さんにお願いしながら、てるてる坊主を一太と遥香と三人で手分けして作っていたんだよ」 「そのてるてる坊主、あちこちにぶら下げただろう。だからウーと亜優がビビりまくっていたんだ」 悪いことに驚いた気持ちを表す、天哪(ティェン ナ)!。うわぁ!。と言って逃げ回っていたみたい。薄暗い部屋の中に白い物体がぶら下がっているんだもの。そりゃあ、びっくりもするしぞっとする。 「雨上がったのかな?」 「霧雨程度だが、まだ降ってる」 「今日のサッカーの試合、奏音くん、光希さんと見たかっただろうな」 「そうだな。あとは龍成がどう決断するかだ。キャンセルするか、護衛を倍にして予定通り磐梯熱海に行くか」 包み込むかのように身体を抱き締めてくれる腕に力が入ったのが分かった。 「遥琉さん、また沢山の、罪のない人たちが犠牲になったの?」 「未知は心配することはない」 「だって……」 「チカも国井も無事だ」 鼻先に、頬に、そして最後に唇に。 彼の唇がそっと静かに触れてきた。

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