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番外編 世間を欺く仮の姿
「ピンポンピンポンって何回も鳴らさなくてもおじちゃんたち聞こえるから、これからは一回だけにしような」
面白がってチャイムを何十回と連打した悪戯っ子は、晴くんと未来くんだった。
ふたりと同じ目の高さになるようにしゃがむと、頭ごなしに怒るのでなく、何で駄目なのか、ふたりが分かるように優しく教えた。
「オヤジすまない」
信孝さんが慌てて駆け込んできた。
「パパ待ってって言ったのに何で勝手に先に行っちゃうのかな」
「いちたくんとハルちゃんとはやくあそびたかったんだ。ごめんなさい」
「パパごめんなさい」
晴くんと未来くんがしゅんとして項垂れた。
「信孝、そのくらいにしておけ。こっちにも早く遊びたくてうずうずしていたのがふたりいるから」
彼の後ろから一太と遥香がひょっこり顔を出した。
「ふたりのことは心配するな。迎えの時間は気にしなくていい。腹を割ってとことん話し合ってこい」
「オヤジ感謝する」
頭を下げると、ふたりの着替え一式が入ったトートバックを彼に渡し、組事務所の前で待っている龍成さんのもとへ急いで踵を返した。
柚さんと三人。兄妹で話し合うこと自体何年振りだろう。信孝さんがふとそんなことを漏らしていた。
大好きな奏音くんとぱぱたんがいなくて最初がっかりしていた晴くんと未来くんだったけど、紗智さんとウーさんもふたりの遊び相手になってくれてた。盆と正月がいっぺんにきたみたいに賑やかで。いつもお昼過ぎまで寝ている那和さんもさすがに寝ていられなくてお昼前に起きてきた。
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