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番外編 世間を欺く仮の姿

「へぇ~~柚原みたいにすごい狙撃手、楮山組にもいるんだ」 バスローブを羽織り缶ビールを片手に台所と居間をウロウロする那和さん。すっかり見慣れた光景にみんなさほど驚かなくなった。 「鳥飼に聞いたが心当たりはないそうだ」 「じゃあ、黒竜が寄越したんだ」 「恐らくな。義足の男もそこら辺をうろちょろしている。危なくて子どもたちを散歩にすら連れていけない」 「光希と奏音、それに縣三兄弟大丈夫なの?」 「今のところはな」 「ふぅ~~ん」 長い脚を組み台所のテーブルの端に腰を掛けて、缶ビールを呑みながら目の前に並べてあるおびただしい数の写真を見つめる那和さん。 「バーバ、これは?」 「一昨日から今朝にかけて楮山組を張り込んでいた千里の手下と、ヤス、それにハチがそれぞれの持ち場で証拠のために撮影した写真だ。警察官や野次馬に紛れ込んでいることも十分有り得るだろう」 「ふ~~ん、なるほどね」 「紗智と亜優とウーにはこれから聞くんだが、この写真の中に見たことがあるひとがいるか?間違っても構わない」 「バーバそんなこと急に言われても困るよ」 目を皿のようにして写真を一枚ずつ眺める那和さん。

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