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番外編テウという男
伊澤さんがビデオ通話にしてくれて。今何が起こっているか、どんな状況か、リアルタイムに知ることが出来た。
生田目と名乗った父親は、鳥飼さんの顔を一目見るなり、急にそわそわしはじめた。
「そうだ急用を思い出した」額の汗を手で拭いながら、乗ってきたタクシーに慌てて戻ろうとした。でも、一緒にいた女子中学生は全く動こうとしなかった。
やがて伊澤さんがスマホで撮影していることに気付くと、ふふっと中学生とはとうてい思えない大人びた妖艶な笑みを浮かべた。
その瞬間、さぁーと全身に鳥肌が立った。
それは紗智さんも那和さんも同じだった。
「なんか急に寒くなってきた」
「俺も」
ぶるぶると震えながらふたりして腕をさすりはじめた。
「みその、早くしろ!なに、グズグズしているんだ!」なかなか動こうとしない娘に父親が苛立ちはじめた。
喉へひっかかる皺枯れ声に鳥飼さんがハッとし、男の顔を二度、三度と見たあと、何かを確認するかのように手と首の辺りを食い入るように見ていた。
「やはり楮山が送り込んだ鼠だったか。鳥飼が何か言ってるな。声が小さ過ぎて聞こえないな」
ーどっかで見たような面だと思ったらー
伊澤さんが代わりに答えてくれた。
ーテイか、テウか、テル。すみません。周りが五月蝿くてー
「それだけ分かればなんとかなる。調べてみるよ。ありがとう伊澤」
彼が橘さんをちらっと見ると、すでにパソコンを開き、なにやら操作をはじめていた。
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