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番外編 テウという男
「彼の名前はテウ。苗字は九鬼」
「は?」
彼の手が止まった。
「今から十七年くらい前、記憶喪失の20代前半のホームレスの男を当時の組長がどこからか拾ってきたみたいです。毒蛇に噛まれ右の親指と薬指が欠損していた男は、部屋住みとして組長夫妻の身の回りの世話をしていたみたいです。特に姐さんにとても可愛がられていたみたいですよ」
「要は姐さんのコレだろう?」
彼が小指を立てた。
「一回りも年下の超絶イケメンが目の前に突然現れ、朝から晩まで、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるんだ。そりゃあ、好きになっちまうだろう。姐さんと部屋住み。主従関係にあったとしても男と女だ」
「超絶イケメンには見えませんが、まぁ、そういうことにしておきましょう。妻を愛していた組長は姐さんとの離婚を拒んだ。重婚は違法。先々代がテウを養子に迎え、それで収拾を図ったみたいです」
「じゃあ、あの中学生は?」
「本当の娘かも知れませんね」
「光希さんみたく夫がふたりいてもうまくいってる夫婦もいれば、上手くいかない夫婦もあります。姐さんはテウと駆け落ちし、以後、行方知らずになってます」
「鳥飼はよく覚えていたな。さすがだ」
男は女子中学生の腕を引っ張りタクシーに乗せようとした。
でも、その女子中学生は誰も予想していなかった突拍子もない行動に出た。
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