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番外編 テウという男
「未知は見ない方がいい」
彼が慌てて画面を手で隠した。
ー姐さんだけじゃない。紗智たちにも刺激が強いから一旦切るぞ。録画をしなくても防犯カメラの映像があるから。まぁ、なんとかなるだろうー
そう言うと電話が切れた。
「千里のストリップショーでも見てもっと勉強しないと。まだまだ修業が足りませんね」
橘さんがパソコンをぱたんと閉じた。
「あの~~」
那和さんが右手を挙げた。
「僕だけじゃなく、紗智もマーも全く分かりません状態だと思うんだけど」
「九鬼総業のことは分からなくていいんですよ。睦さんと鳥飼さんがそれぞれ生涯の伴侶と巡り会い、幸せを掴んだ、そのことだけ覚えていれば十分です」
「魑魅魍魎が跳梁跋扈する伏魔殿だ。過去の栄光に取り憑かれた悪党どもが今も暗躍している」
彼がスマホを上着の胸ポケットにそっとしまった。
防犯カメラの映像を確認したお祖父ちゃんが、警察が行方を探している女性に似てるかも知れないと言い出した。
「被害者の身元を特定するために、新白河駅や、駅周辺に設置されてある防犯カメラの映像から作成した似顔絵が公開されてある。橘、悪いがパソコンを開いてくれ。あれ?橘は?さっきまでここにいなかったか?」
辺りをキョロキョロと見回すお祖父ちゃん。
「子沢山だから、ままたんは大変だな」
太惺と心望を脇に抱え、一太と遥香と晴くんと未来くんにズボンを引っ張られ、いつの間にか居間へ移動していた橘さんに、お祖父ちゃんが苦笑いしていた。
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