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番外編 テウという男

「鳥飼、鞠家と柚原は?ふたりから何か連絡はあったか?」 「いえ、まだです」 「俺にもまだだ。ところで伊澤は?」 「若い衆にゲキを飛ばし、エントランス付近を警備している」 「相変わらず真面目な男だ」 橘さんが休憩にしたら如何ですか?とお茶とおやつを運んできてくれた。 「まま、たー」 泣きながら太惺が後を追い掛けてきた。 「珍しいな、一人だけか?」 「ここちゃんは一太くんとハルちゃんのあとを追い掛けています」 「そうか。なるほどな。おっきいじぃじっておいで」 両手を広げると、 「じー」 見て見て上手にあんよが出来るんだよ。誇らしげな表情でお祖父ちゃんの腕の中に飛び込んでいった。 「どうした?これが欲しいのか?」 スマホにそっと手を伸ばす太惺。 「ぱぱたんたちからいつ電話が掛かってくるか分からないから、貸してやることは出来ないんだ。ごめんな」 太惺は下唇をこれでもかと伸ばし、ブー、ブーと唇を震わせた。 「鷲崎ともしもししたいのか?しょうがねぇな、少しだけだぞ」 なんだかんだいってひ孫にはめっぽう弱いお祖父ちゃん。鷲崎さんにすぐ電話を掛けくれた。 ーはい。鷲崎ー ガチガチに緊張している声が聞こえてきた。 お祖父ちゃんは彼やみんなにとってそれこそ雲の上の存在だもの。緊張するなというのがまず無理だ。鷲崎さんの声が聞こえてきて、太惺のご機嫌はあっという間に直ってしまった。

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