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番外編 我が子のためなら鬼にでも蛇にでもなれる

「遥琉さん、光希さんは?奏音くんは?」 心配で胸が張り裂けそうになった。 「連中は、縣一家の姐さんを軽く見すぎだ。光希は誰よりも夫想いで、組や舎弟たちを大事にしている。奏音も目に入れても痛くないくらい可愛がっている。我が子のためなら鬼にでも蛇にでもなれる。それが親ってものだろう。光希は楮山組の構成員が真後ろの席に座っていることに試合開始前から気づいていたみたいだ。奏音を守るため危険を承知の上で懐に忍ばせておいた折り畳みナイフをその男の喉元に突き刺し盾代わりにした。その隙に玲士に護衛させ奏音を安全な場所に避難させた。鞠家とハチで一般人に紛れ込んでいた楮山組の構成員を全員取り押さえた。根岸は一般人を安全な場所に誘導した。誰ひとり怪我はしていない。巻き込まれた一般人もいない」 「遥琉さん、柚原さんも大丈夫なんだよね?」 「あぁ。大丈夫だ。相手の片方の足に一発弾を命中させたみたいだ。あの距離で一発で仕留めるんだ。腕は全く鈍っていない。柚原を昼行灯と揶揄している連中に見せたかった。鞠家やハチが惚れ惚れしていた。痺れるくらい格好良かったらしいぞ」 「僕も見たかったな」 「俺もだ。橘がもしその場にいたら間違いなく二度惚れしていた」 まずは無事で何より。彼が安堵のため息をついた。

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