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番外編 もやもや
次に送信されて来たメールには写真ではなく動画が添付されてあった。
「どうした橘?」
「いえなんでもありません」
平静を装う橘さん。
「じゃあ聞くが、なんで目を逸らすんだ?やましいことがあるからだろう」
「やましいことなんてありませんよ」
スマホを隠そうとした橘さんを、彼が見過ごすはずもなく。
「ちょっと遥琉」
メールの内容が気になる彼と、死んでも見せたくない橘さん。スマホを取り合い、揉み合っているうちにバランスを崩し、橘さんが下、彼が上、抱き合う格好で畳に倒れ込んだ。
ふたりの姿を見た瞬間、胃が締め付けられるくらい痛くなった。ふたりが付き合っていたのはうんと昔のことなのに。
息苦しくて、視界が一瞬揺らいだ。
足元がふらつき倒れそうになった僕を側に控えていたウーさんが支えてくれた。
「ありがとう」
「遥琉」お祖父ちゃんが声を荒らげた。
彼がはっとして体を起こそうとしたけど、パパとままたんに遊んでもらえると思った太惺が、キャキャと歓声を上げながら、ハイハイでふたりに突進していった。
楽しそうに彼と橘さんとはしゃぐ太惺を見たとき、悲しくないのに涙が出てきた。
ひとりだけ仲間はずれにされているようで嫌だった。
「……陽葵……見てくるね」
ふらふらと立ち上がり寝室へ向かった。
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