1754 / 4011
番外編 彼のいない寂しさ
たまにはお灸を据えた方がいい。昇龍会会長直々の命令で、鞠家さんと柚原さんに両脇を抱えられ、組事務所の隣の部屋に連れていかれてしまった。
縣兄弟とたまには鼎談するのも遥琉の為になる。なにもそこまでしなくてもいいのに。
彼が隣にいない寝室はがら~~んとしていて、抱き締めてくれる温かな腕も、安心できる心地いい温もりもなく、冷たい布団にひとりで横になるしかなかった。子どもたちがなかなか寝てくれなくて。陽葵がようやく寝たと思ったら今度は太惺と心望がぐすりはじめて。泣きそうになりながらひとりであやしていたら、マー、手伝うよ。紗智さんと那和さんが。
マー。オレも。亜優さんが。
マー、ダイジョウブ?ウーさんが様子を見に来てくれて。ずっとぐすって泣いてばかりいる太惺と心望をあやしてくれた。
「今日話し合ったことをバーバに伝えるんだって」
「尿検査の結果がきて。薬物反応がわずかだけど出たって」
「柚さん逮捕されるの?」
「チカちゃんが言うには治療がまず先だって。退院するまで、紫さんと度会さんが責任をもって子どもたちの面倒をみる。柚さん、紫さんに謝って頭を下げたって」
ようやくこれで前に進める。良かった。ほっとし胸を撫で下ろした。
新たな心配事は、チカちゃんと国井さんのことだ。本庁からも甲崎さんらマル暴の刑事が応援に向かうって話していた。楮山ら、組の幹部は捨て身の行動に出るかもしれない。だからあぶねぇんだ。彼も警戒していた。
ともだちにシェアしよう!

