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番外編 橘さんと千里さん
ーあれれ、お兄ちゃんが怒らない。珍しいー
「朝から無駄な体力を使いたくないだけです。子育ては体力勝負ですからね」
ーふたりでも大変なのに、お兄ちゃんってほんとすごいよね。感心するー
「みんな素直で可愛いですよ。どんなに疲れていても、子どもたちの笑顔を見たら一瞬で疲れが吹き飛びます。千里、そんなことより、熱海フットボールセンターに現れた狙撃手の正体が分かったんですか?」
ー鋭意、調査中です。しばらくお待ちください。あっちもこっちも大変なのよ。シェドに振り回されて。あ、でも、テウじゃないよ。それは確かよ。そんじゃあ、バイバイ~~また、電話するね。未知、元気でねー
聞かれてまずい事でもあるのか、急に歯切れが悪くなり千里さんの方から一方的に電話を切った。
「たいした用でもないのに朝から人騒がせな妹ですみません」
「千里さんの声が聞きたかったから、聞けて嬉しかったです。事件が立て続けに起きて、寝る暇もないくらい忙しいだろうから、こっちから電話を掛けていいか分からなかったから。あ、そうだ。今何時だろう」
スマホの画面をチラッと確認した。
「チカちゃんたち大丈夫かな?」
朝7時ちょうどに東京の事務所兼自宅と、シェドが滞在している新潟県内のとある町にある高級リゾートホテルなど関係先に一斉に警察が家宅捜査に入る。心配で心が落ち着かなかった。
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