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番外編 報復措置

身を潜めながら外の様子を伺う柚原さん。普段子どもたちに向ける優しいぱぱたんの眼差しとは違い、まるで獲物をつけ狙う鷹のような鋭い眼差しだった。そんな柚原さんをウーさんは目をキラキラと輝かせじっと見つめていた。 「軟弱地盤で、液状化現象もある。売れずにずっと空き地になっていた土地に10階建てのビルが建つと聞いて、違和感を感じた。俺たちを監視するため、誰かが絵図を描いたんじゃないかってな」 柚原さんの説明では、発注元は東京に本社がある一部上場の業界最大手の有名な投資コンサルト会社。 実際そんな発注をした社員は誰もおらず、工事は完全にストップしているみたいだった。 「裏で黒竜が糸を引いているとまことしやかに囁かれている。みんな命が惜しいから騒ぎにならないだけだ。黒竜にサイバー攻撃され、大事な顧客情報を人質にされ、何億という身代金を出した企業も実際あるからな」 柚原さんの男らしく精悍な顔付きは、現役時代とまったく変わっていなかった。むしろ、ストイックさにより磨きがかかったような気がした。 「思い出した。なるほどな。狙撃手はアイツか」 一人でぶつぶつ言うと、一人で納得していた。 「柚原さん?」 「やっぱり鳥飼の顔見知りだ」 さっとカーテンを引いた。

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