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番外編 報復措置
「未知大丈夫か?」
息を切らしながら彼が駆け付けてくれた。
「遥琉さんこそ事務所にいなくていいの?」
「鞠家と龍成に任せてきたから心配するな」
「子どもたちは?」
「みんな無事だよ」
「大きい子どもたちもか?」
「うん」
「そうか、それなら良かった」
ほっとしたように僕を見て、嬉しそうに首を項垂れた。
「ここ一帯再開発が進んでいるから、ビルやマンションが建設されてもさほど気にも止めなかったけど、これからは……あれ何だっけ?」
「あれと言われてもな」
「建設現場によく看板立ってない?」
「看板?」
「うん。出入口のところに」
彼が不思議そうに首を傾げた。
「おはよう」一太と遥香がひょっこり顔を出した。
「お、ふたりとも早起きだな」
「ハルちゃんにふとんもっていかれて、さむくて目がさめたんだ」
「そうか。ハルちゃんは幼稚園だな」
「うん。でもね、ままたんがちょっとまってって」
「行く用意だけしてお利口さんにして待ってろ。そのうち静かになる」
「はぁ~い」元気に返事をするとぱたぱたと走っていった。
「けんせつけいかくのお知らせって言うんだってゆずはらさんがいってたよ」
「おぅ、そうか。ありがとう一太」
「ゆずはらさんとまりやさん、がっこうのかえり、たまに立ち止まってじっーと見てるよ。きいたことないかいしゃだな、とか、こんなところにビルがたつのかって、ひとりでぶつぶつ言ってるよ」
「ふたりとも鋭い観察眼を持ってるからな。ハチも伊澤もだ」
彼がベタ褒めしていた。
建設計画のお知らせを見ても全然分からないけど、何が建つのかくらい見ておこう。
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