1762 / 4011

番外編 報復措置

「まさか一太に助けられる日が来るとはな。参ったな」 唇を噛んで笑うのをこらえた。 「何を話していたんだっけ?」 「鳥飼さんの弟分の話し」 「そうだったな。楮山と上田は分かるよな?」 「うん」 「この二十代前半の茶髪に鼻ピアスをしている男が、羽鳥湖で立てこもり事件を主導した男だ。鳥飼と楮山の影に隠れて分かりずらいと思うが坊主頭の男がふたりいるだろう?」 彼に言われて目を皿のようにして写真を覗き込んだ。 「譲治(じょうじ)達治(たつじ)兄弟だ。楮山にこき使われ、汚れ仕事ばかりやらされているんじゃねぇか。鳥飼が心配していた。植物状態でずっと眠っている妹がいるそうだ。その治療費を払うため、あと親の借金を返すため兄弟でヤクザになったらしい。柚原が見たのはこの兄弟で間違いない。俺の大事な女房の命を狙うとは、身をもって分からせてやらねぇとな」 彼が不適な笑みを浮かべた。 「遥琉さん、そういえば千里さんが強力な助っ人をひとりこっちに向かわせたって」 「シェドと芫に復讐の炎をメラメラと燃やしている男らしい。千里に聞いたが、詳しいことまでは教えてもらえなかった。柚原と仲良く出来るといいんだが」 面倒くさい男はいらねぇぞ。絶対寄越すなよ。彼がぶつぶついいながら、大きいため息をついた。

ともだちにシェアしよう!