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番外編 魂が欲しいならくれてやる
「どうやらお喋りが大好きな烏が昇龍会に一羽いるらしいな。楮山が未知の命を狙ってるって聞いたんだろう。未知のそばにいて守るのが俺の役目。弾よけなのにそばにいれない、こんな悔しいことはない。そんなに俺が欲しいなら魂ごと芫にくれてやる。それで未知が助かるなら本望だ、そう言ってな、千里に行かせてくれって頼み込んだんだ」
秦さんの言葉を聞きながら、僕は涙が止まらなくなってしまった。
「姐さんの弾よけだからだ。他に理由はない。病院にいるより、姐さんの側にいた方が治療になる。姐さんが狙われているんだ。ただ黙って指を咥えて見ているなんて出来ない」
弓削さんの落ち着いた、低い調子の声が聞こえてきて。
ほどなくして一太と奏音くんが弓削さんを連れてきてくれた。「あのねかなたくん、ゆげさんはねママのたまよけなんだよ。スッゴクつよいんだよ。だから、かなたくんのみかただよ」弓削さんに初めて会う奏音くん。一太がちゃんと弓削さんのことを説明してくれていた。
「右手だけ黒い手袋を嵌めているのは手術痕を隠すためだよ。愛の力ってすごいね。改めて思うよ。遥琉、龍成は?」
「弓削に驚いて傘立てに足の爪先をぶつけたみたいです。たいしたことはありません。新幹線に乗り遅れると走っていきました」
「そうか」
龍成さんと喋りたかったのかな?
秦さん残念がっていた。
弓削さんは挨拶もそこそこに今後のことを話し合うためウーさんをさっそく連れ出した。
長期に渡る治療と長時間の移動の疲れで顔色があまり良くない。無理しないといいけど。
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