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番外編 テウの娘の行方
「なんだってずない人だごと。菱沼組は他の組とは違い若いのが多いな」
「オヤジを慕い、みんな、自然と集まってくる。俺も彼もそのうちのひとりだ」
「そうか、なるほどな」
渡辺さんがフーさんに軽く会釈をすると、フーさんも軽く頭を下げた。
「みな礼儀正しく挨拶もきちんとする。俺たちも見習うべきところは見習わないとな」
渡辺さんが自嘲した。
「テウの娘の名前は詳しくは知らない。柚さんにはこなつと名乗っていたそうだ。ホテルでこなつと一緒だった母親役の女はおそらくテウのイロだろう。動画があっという間に拡散されてしまい、動きたくても身動きが取れないのかも知れない。市街地を出ればのどかな田園風景が広がる田舎町だ。過疎化が進み廃墟となっている空き家も多い。そこに潜伏している可能性だって十分にあり得る」
鳥飼さんはテウについて知っていることを渡辺さんに伝えた。
「なぁ、鳥飼。一つ聞いていいか?仮に九鬼総業が再興した場合、誰が一番特をすると思う?」
「楮山とシェドを裏で操っているヤツだろうな」
「上田でもない、西岡でもない、テウでもないとすれば、夢華か、夢華のそばにいる義足の男か。面倒なことにならなければいいが……」
渡辺さんが両手をポケットに滑り込ませた。
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